ネット通販利用者保護のための「デジプラ法」とは?目的と具体的な内容とは?
スマートフォンの普及によって一気に右肩上がりとなっているインターネット通信販売市場。2020年からのコロナ禍により、いわゆる「巣ごもり需要」「おうち時間」が増えたことで、さらに幅広い年齢層のユーザーが、インターネット通販を利用するようになっています。
そのような中、ネット通販事業者と消費者の間で起こる様々なトラブルも急増しています。
このような背景を受けて、2021年4月28日に「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(略称「デジプラ法」)が参議院本会議で採決が行われた結果、可決され成立しました。
そこでここでは、この「デジプラ法」に注目し、どのような内容の法律なのかをご紹介します。
デジプラ法の目的
「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(以下「デジプラ法」)は、ネット通販におけるトラブルから消費者を守るための法案です。
※取引デジタルプラットフォーム(DPF):オンラインモールなど、利用者同士での取引の場を与えるもの
たとえば、商品自体に何かしらの欠陥や問題があったり、そもそもが偽物であったり、広告内容に事実と異なることが謳われていたり、といった「消費者側が被害者」になるトラブルが増えていることから、「デジプラ法」は消費者保護を目的として成立しました。
デジプラ法の具体的な内容
デジタルプラットフォームを提供している「デジタルプラットフォーマー」に対して、「デジプラ法」は具体的に以下の内容を課し、あわせて情報の開示請求権や官民協議会の組織建てと申出制度の創設を定めています。
【(1)取引DPF提供者の努力義務(第3条)】
• 取引DPFを利用して行われる通信販売取引(BtoC取引)の適正化及び紛争の解決の促進に資するため、 以下の①~③の措置の実施及びその概要等の開示についての努力義務(具体的内容については指針を策定)
① 販売業者と消費者との間の円滑な連絡を可能とする措置
② 販売条件等の表示に関し苦情の申出を受けた場合における必要な調査等の実施
③ 販売業者に対し必要に応じ身元確認のための情報提供を求める
【(2)商品等の出品の停止(第4条)】
• 内閣総理大臣は、危険商品等(※1)が出品され、かつ、販売業者が特定不能など個別法の執行が困難な場合(※2)、取引DPF提供者に出品削除等を要請
⇒ 要請に応じたことにより販売業者に生じた損害につ いて取引DPF提供者を免責
(※1)重要事項(商品の安全性の判断に資する事項等)の 表示に著しい虚偽・誤認表示がある商品等 (※2)販売業者が特定可能等の場合は特商法等により対応
【(3)販売業者に係る情報の開示請求権(第5条)】
• 消費者が損害賠償請求等を行う場合に必要な範囲で販売業者の情報の開示を請求できる権利を創設
※1 取引DPF提供者は、適切な手順に従って開示請求 に応じた場合、販売業者に対し責任を負わない
※2 損害賠償請求額が一定金額以下の場合や不正目的 の場合は対象外
【(4)官民協議会(第6条~第9条)・申出制度(第10条)】
•国の行政機関、取引DPF提供者からなる団体、消費者団体等により構成される官民協議会を組織し、 悪質な販売業者等への対応など各主体が取り組むべき事項等を協議
• 消費者等が内閣総理大臣(消費者庁)に対し消費者被害のおそれを申し出て適当な措置の実施を求める 申出制度を創設
※公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行
※あわせて、施行状況及び経済社会情勢の変化を勘案した施行後3年目途の見直しを規定
※『取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案 概要』より
消費者が被害を受けない法整備を
消費者を急増するネット通販トラブルから守るために作られたデジプラ法。
ですが、課題点としては、デジタルプラットフォーマーに対して「努力義務」レベルでの改善・予防を課している点です。
今後も市場拡大と比例して様々な角度でのトラブルが、消費者と企業間で起こることは避けられません。そのため、今後も現状に沿った法整備が行われることが期待されます。
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