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運営 公開日:2020.04.03

苦戦中のトヨタの「KINTO(キント)」からみるサブスクモデルの特徴・ポイントとは?

2019年2月にトヨタ自動車株式会社(以下トヨタ)が発表した、サブスクリプションサービス「KINTO(キント)」(運営会社は「(株)KINTO」)。

国内自動車メーカーのなかで、人気のサブスクリプションモデルを最初に導入したサービスですが、残念ながら2020年1月現在、苦戦を強いられています。

ここでは、このトヨタ発の自動車のサブスクリプションサービスKINTOが苦戦する原因を推察しつつ、従来のサブスクリプションモデルの特徴・ポイントについて見ていきます。

自動車のサブスクリプションサービスKINTOとは

トヨタ発の自動車のサブスクリプションサービス「KINTO」を運営している企業は、その名も株式会社KINTO。

資本金は18億円。株主と出資比率は、トヨタファイナンシャルサービス株式会社が66.6%、住友三井オートサービス株式会社が33.4%となっており、代表取締役社長はトヨタファイナンシャルサービス株式会社上級副社長の小寺信也氏です。

KINTOの名前の由来は、「必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる」筋斗雲(きんとうん)から、とのこと。

名前の由来やサブスクリプションであることからも窺えるように、サービスの内容の大枠は「自動車(現時点では新車)を『購入して所有する』のではなく、『一定期間月額支払いでリースする』」というモノ。

頭金なしで、諸経費や税金・任意保険などを含んだサブスク(月額定額制)サービスなのです。

また、KINTOには「KINTO ONE」「KINTO SELECT」の2種類があり、前者は31車種のなかから好きな車種の新車を3年間乗ることができ、後者はレクサス6車種を3年間、半年ごとに乗り換えることができます。

トヨタ自身が「自動車をつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」という宣言を掲げているように、単に自動車を生産・販売するという考え方から抜け出し、現代社会のライフスタイルに柔軟に合わせたサービスを拡大していく企業姿勢が見て取れるサービスと言えます。

KINTOの現状

ですが、冒頭でご説明したように、現時点ではKINTOは苦戦していると言わざるを得ない状況です。

2019年12月に(株)KINTOが公表した内容によると、4800超の全国販売店とウェブサイトでの展開中、1日平均での申し込みは約5.7件、という結果。

テレビCMを放映しているものの、認知度自体が2019年11月時点で約18%ということからも、あまり一般的に浸透していないと思われます。ただし、認知度が高くなったからと言って、実際にサブスク契約するかどうかは別問題。

KINTOの主要な目的には、車離れが著しい「20代の若年層」へのアプローチと、新規顧客との継続的な関係性の構築、があります。

いきなり車の購入はできない、もしくは購入するほどの興味はない、という層に対して、「月額で考えれば、購入するよりも総合的には低価格で利用することができますよ」というメリットを打ち出し、結果的にトヨタという企業へのLTVや顧客ロイヤルティを高めることも視野に入っていると推測できるでしょう。

しかし、残念ながら現時点においては、対象ユーザーにうまく訴求できておらず、サブスクリプションとして利用するほどのメリットもしくはベネフィットをユーザーが感じるほどの存在には至っていないと言えます。

サブスクリプションモデルの特徴

では、サブスクリプションモデルが成功にするには、どのような特徴を兼ね備えていなくてはならないのでしょうか。

成功しているサブスクリプションモデルと言えば、映画や音楽といったデジタルコンテンツやソフトウエアの利用、ブランドアイテムのレンタルなどが挙げられます。

一般ユーザーにとって、商品やサービスを購入するかどうかの最初のハードルは「(デジタルコンテンツや商品が)好みに合うかどうか、実際に利用しないと分からない」ため、「利用前に高額を支払いたくない」という心理です。

ですが、サブスクリプションなら契約期間中、「負担にならない額で」「複数の商品やコンテンツを試すことができる」ため、結果的に「利用するほど損をしない」という心理状態になりやすいと言えます。

また、たいていのサブスクリプションサービスには、複数の利用プランが用意されています。そのため、ユーザー自身のライフスタイルに合わせて無駄なく必要経費を支払えばよい、という合理的な考え方と合致し、継続利用をしやすくしています。

KINTOの苦戦原因

KINTOが苦戦している原因として挙げられるのが、上述したサブスクリプションモデルの特徴である「負担にならない額で」「複数の商品やコンテンツを試すことができる」というメリットがカバーできていない点です。

KINTOでは、購入時との総費用(諸費用、任意保険込み)の比較(KINTO契約の3年間)をした時に、「月額約6,000円、KINTO利用のほうが安くなると」提示しています。しかし、これはそもそも「自動車の購入=所有財産」という価値体系とベースが異なる上に、「月額約6,000円」という金額にどこまで価値を見出せるか、という点でも難しいと思われます。

また、KINTOの特徴として、「3年縛り」があります。この「3年」という契約期間は、サブスクリプション利用を検討する際の「好みかどうか分からないからちょっと試してみたい」というユーザー心理にとっては、ハードルが高くなってしまいます

元々KINTOの目的のひとつが「これまで自動車になじみ・興味がそれほどない若年層の開拓」であるのならば、このような導入検討時の3年縛りのハードルは、かなり高くなっていると言えるでしょう。

サブスクリプションモデルの動向に目が離せない!

現代社会のユーザー心理に沿ったサブスクリプションモデルの台頭は必然的であり、今後も製品・サービスのジャンルにかかわらず、様々な業種から生まれることは明白です。

しかし、サブスクリプションのメリットをユーザーが実際に感じるメニューでなければ、結果は芳しくなく終わってしまう可能性は否めません。

KINTOのこれからの新提案・訴求戦略に期待しつつ、サブスクリプションモデルの動向にこれからも注目していきましょう。

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