マーケティングの巨匠セオドア・レビットとは|売れる商品開発のヒントになる、消費者の真の欲求を探る意味
マーケティングについて少しでも専門的な知識を得たい、とお考えのマーケティング戦略ご担当者の方は、何人かの世界的に有名なマーケターの名前が浮かぶのではないでしょうか。
たとえば「フィリップ・コトラー」や「ジェフリー・ムーア」。また数年前に一般的にも話題になったことから、経営学の神様とも呼ばれる「ピーター・ドラッガー」の名前がすぐに頭に浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ここで注目したいのが、上述したマーケティングや経営学の大家たちと並び、特に現代のマーケティング業界において多大なる影響力を未だに与え続けている「セオドア・レビット」博士です。
今回は、セオドア・レビット博士に焦点を当て、彼がどのような人物であり、マーケティングについてどのような考えを述べているのか、簡単にご紹介します。
セオドア・レビット(Theodore Levitt)博士の経歴
セオドア・レビット(Theodore Levitt)博士は、1925年ドイツに生まれました。しかし第二次世界大戦時、ナチスの台頭により、一家でアメリカ合衆国(最終的にオハイオ州デイトン)へと移住します。その後、1940年に市民権を正式に得ました。
1951年にオハイオ州立大学で経済学の博士号(Ph.D)を取得し、ノースダコタ大学で教鞭をとったのがキャリアの始まりです。
その後、1959年より、ハーバード・ビジネススクール(ハーバード大学大学院)の講師となり、翌年1960年には、代表論文のひとつである「マーケティング近視眼」を発表します(後に名誉教授となる)。
1985年から1989年まで、『ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)』の編集長でもありました。1990年に掲載論文について論争が起こり、編集長を辞任・退職。
2006年6月28日、マサチューセッツ州にて81歳で永眠されました。
人々はドリルではなく、穴を求めている
セオドア・レビット博士の有名な著書『マーケティング発想法』(1971年)に書かれている以下の文章は、現在でもマーケティングについての端的かつ最重要な考え方であると言われています。
「人々が欲しいのは1/4インチ・ドリルではない。彼らは1/4インチの穴が欲しいのだ」
原文:People don’t want quarter-inch drills. They want quarter-inch holes.
これは正確には、別の人物の言葉として『マーケティング発想法』内で引用されています。ですが多くの場合、マーケティングの本質を表すセオドア・レビット博士の言葉として広まっています。
この言葉をもう少しかみ砕いて説明すると、このケースの場合、消費者は「ドリル」がどうしても欲しくて、「ドリル」を探しているのではない、つまり「ドリルが最終目的ではない」という事を指しています。
消費者の最終目的は「穴(を開けること)」であり、希望通りの穴を開けることができるのならば、ドリルでなく別の手段・道具を使っても良いと考えているのです。
つまり、消費者が求める結果もしくは利益は「穴」であり、「ドリル」とは全く限らない、ということを示しています。
製品を開発・販売する側から見れば、いかにドリルを良く見せて購入してもらおうかと考えるのが当然であり、ドリルの性能を上げたり、そのスペックの良さをアピールしたりしてしまいがちです。
ですが、それはあくまで販売する側の思い込みと押し付けであり、消費者が本当に求めているモノ・コトが見えていない状態と言えます。
シンプルに言えば、マーケティングとは、多くの消費者に商品が売れるために試行錯誤する企業活動全般を指します。当然ですが、消費者心理も調査するはずです。
ですが、そもそものゴール設定を「思い込み」によって間違っていれば、マーケティングの方向性自体が誤っていることになってしまう、という重要な事実をレビット博士は述べているのです。
隠れされた本当の欲求を探ってみよう
一貫してセオドア・レビット博士が伝えようとしているのは、マーケティング戦略を立てる際、多くの企業は「売り手目線」で物事を判断しようとする、という点。
ですが、本来マーケティングとは、「買い手目線」に立ち、「消費者は何を最終的に求めているのか」「隠れされた本当の欲求とは何か」を探り、「かゆいところに手を届かせる」事が、成功への道に続いているのです。
1971年に書かれた著作ながら、現代でも十分に通用するレビット博士の言葉。マーケティングの古典を今一度読み返し、マーケティングの原点に立ち返ることをぜひおすすめします。
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